はじめに|デンマークのお酒・ビール事情
カールスバーグ(Carlsberg)はどこの国のビール?
答え:デンマーク。1847年に首都コペンハーゲンで創業された、デンマークを代表するビールだ。
デンマークではTuborgなどの大手銘柄に加え、Mikkellerなどのクラフトビールも親しまれている。ここからは、定番からローカル銘柄までおすすめの9種類を紹介する。
デンマークビール9選
| 銘柄 | スタイル | 定番度 |
|---|---|---|
| Carlsberg(ピルスナー/Elephant) | ピルスナー/ラガー | ★★★ |
| Tuborg(Grøn/Gold) | ピルスナー | ★★★ |
| Faxe(Royal Unibrew) | ラガー/アンバーラガー | ★★★ |
| Nørrebro Bryghus | IPA/ペールエール/ポーター | ★★ |
| Fur Bryghus | エール/ウィートビール/ボック | ★★ |
| Herslev Bryghus | オーガニック/サワーエール | ★★ |
| Mikkeller | クラフト各種(IPA・スタウトほか) | ★ |
| To Øl | クラフト各種(セゾン・スタウトほか) | ★ |
| Bøgedal Bryghus | 全手作業醸造のエール | ★ |
Carlsberg(カールスバーグ)
- 定番度:★★★
- 醸造所創業:1847年(デンマーク/コペンハーゲン)
- 醸造所:Carlsberg Group
- スタイル:ピルスナー/ラガー
1847年、科学者でもあった醸造家ヤコブ・クリスチャン・ヤコブセン(J. C. Jacobsen)がコペンハーゲン南西の丘に設立。「Carlsberg(カールスバーグ)」という名は息子カールの名と、デンマーク語で「丘(bjerg)」を組み合わせた造語だ。創業から約40年後の1883年、同社に附属するカールスバーグ研究所が世界で初めて純粋培養酵母の単離に成功し、現代醸造学に革命をもたらした。この科学的成果はライバル含む全醸造所に無償で公開され、ビール品質の向上に世界規模で貢献した逸話が今も語り継がれている。現在はカールスバーググループとして世界140以上の国・地域で展開するグローバルブランドに成長している。
[主な商品]
・Carlsberg Pilsner(5.0%)… 1904年に誕生したフラッグシップ。淡い黄金色で泡立ちが豊か。ホップの穏やかな苦みと麦芽の甘みが調和した、クリーンでバランスの取れたピルスナー。食事との相性も抜群。
・Carlsberg Elephant(7.2%)… 醸造所の門を守る象の像にちなんで名付けられたボック。麦芽の豊かなコクとカラメルを思わせる風味に、ドライな苦みが重なる飲みごたえのある一本。
ピルスナー(Pilsner)とは… 19世紀にチェコのプルゼニュ(ピルゼン)で生まれたラガービールのスタイル。淡い黄金色と透明度の高さ、キレのある苦みが特徴。現在、世界で最も広く飲まれているビールスタイルで、カールスバーグはその普及に大きく貢献した。

Tuborg(ツボルグ)
- 定番度:★★★
- 醸造所創業:1873年(デンマーク/ヘレルップ)
- 醸造所:Tuborg Brewery(カールスバーググループ傘下)
- スタイル:ピルスナー
1873年、コペンハーゲン北郊のヘレルップ港に設立。設立者のフィリップ・ヘイマン、C・F・ティートゲン、グスタフ・ブロック、ルドルフ・プガードらが出資して創業した。1880年にデンマーク初のピルスナー「Grøn Tuborg(グリーンチューボルグ)」を発売したことで、それまで濃色ビールが主流だったデンマークに淡色ラガー文化を根付かせた先駆者。1970年にカールスバーグに買収されて以降はグループ傘下ながら、独立したブランドアイデンティティを保ち続けている。現在もデンマーク国内でカールスバーグと並ぶ最大手として圧倒的な知名度を誇る。
[主な商品]
・Tuborg Grøn(グリーン)(4.6%)… 1880年誕生の歴史的ピルスナー。緑のラベルが目印で、デンマークで最も親しまれているビールのひとつ。軽やかで爽やかな飲み口で、炭酸のキレが心地よい。
・Tuborg Gold(5.8%)… 1895年に輸出用として誕生したプレミアムピルスナー。グリーンに比べてコクと旨みがあり、麦芽の豊かな風味とほろ苦いホップが際立つ。やや高めのアルコール度数で、ゆっくり楽しみたい一本。

Faxe(ファクセ)
- 定番度:★★★
- 醸造所創業:1901年(デンマーク/ファクセ)
- 醸造所:Royal Unibrew A/S
- スタイル:ラガー/アンバーラガー
シェラン島南部の都市ファクセで1901年に創業した老舗醸造所をルーツに持つ。2000年代以降の合併などにより、現在はカールスバーグに次ぐデンマーク第2位の醸造グループに成長した。日本ではあまり知名度が高くないものの、ヨーロッパ各国のスーパーやコンビニで大缶ビールとして広く流通しており、ビール好きに「デンマークといえば?」と尋ねると名前が挙がることも多い。
[主な商品]
・Faxe Premium(5.0%)… クリーンな飲み口の定番ラガー。麦芽の甘みとホップの苦みのバランスが良く、食中酒として扱いやすい。コストパフォーマンスの高さでも人気。
・Faxe 10%(10.0%)… 高アルコールラガー。日常的な存在ながらアルコール度数は圧倒的で、甘みと力強さが共存する。個性的な一本。
・Royal Export(5.4%)… コペンハーゲン生まれのプレミアムラガー。すっきりとしたゴールドカラーで、ホップの爽やかな苦みがアクセント。

Nørrebro Bryghus(ノアブロ・ブリュース)
- 定番度:★★
- 創業:2003年(デンマーク/コペンハーゲン・ノアブロ地区)
- 醸造所:Nørrebro Bryghus
- スタイル:IPA/ペールエール/ポーター
「Nørrebro(ノアブロ)」はコペンハーゲンの多文化地区の名で、「北の橋」を意味する。2003年にノアブロ地区で誕生し、デンマークのクラフトビールシーンを早くから牽引してきたブランドだ。運営会社は2022年末にRoyal Unibrewへ買収され、現在は同社のビールブランドとして展開されている。
[主な商品]
・New York Lager(4.7%)… ホップの爽快な香りとクリーンな麦芽の甘みが共存するアメリカンスタイルのラガー。すっきりとした飲み口で飲みやすい。
・Pacific Summer Ale(4.5%)… ニュージーランド産ホップを使ったペールエール。トロピカルフルーツを思わせる豊かな香りと軽やかなボディ。
・Globe Ale(5.0%)… CO₂ニュートラル認定を受けたサステナブルビール。バランスの良い風味で飲みやすく、「環境に優しいビール」。
Fur Bryghus(フア・ブリュース)
- 定番度:★★
- 創業:2004年(デンマーク/フア島)
- 醸造所:Fur Bryghus
- スタイル:エール/ウィートビール/ボック
ユラン半島北部のリムフィヨルドに浮かぶフア島(人口約800人)に位置する、デンマーク有数の「島ブルワリー」。島全体が化石の宝庫として知られ、5500万年前の地層が露出した独特の地質をブランドアイデンティティの基盤に据えている。醸造所は年間3〜4万人が訪れる観光スポットにもなっており、ビールの試飲と島の風景を同時に楽しめる体験型醸造所として人気が高い。使用する水は島の自然から採取し、エールからボック、ウィートまで幅広いスタイルを丁寧に醸造している。
[主な商品]
・Fur Frokost(5.0%)… 上面発酵のビター・ペールエール。軽やかな香りとほどよいホップの苦みで、食事と合わせやすい。
・Fur Hvede(4.8%)… 上面発酵のウィートビール。バナナとクローブのエステル香が広がる、南ドイツスタイルに近い風味豊かな一本。
・Fur Bock(6.5%)… 深みのある琥珀色で、カラメルモルト由来のリッチな甘みと力強いアルコール感。冬の一杯に最適な濃厚スタイル。
ボック(Bock)とは… もともとドイツのアインベックが発祥とされるラガービール。アルコール度数が高く(一般的に6〜7%以上)、麦芽の濃厚な甘みと豊かなボディが特徴。
Herslev Bryghus(ヘルスレウ・ブリュース)
- 定番度:★★
- 創業:2003年頃(デンマーク/シェラン島・ヘルスレウ)
- 醸造所:Herslev Bryghus
- スタイル:オーガニック/サワーエール
コペンハーゲン西郊のシェラン島に位置する農場ビール醸造所。「自然の摂理に従って醸造する」という理念のもと、認定オーガニック原料のみを使ったビール造りにこだわる。特にユニークなのは旗艦シリーズ「MARK(マルク)」で、ホップを一切使わずに干し草(Hø)や野生の植物でビールを醸造するという大胆な試み。干し草に付着した自然酵母でワイルドファーメンテーション(野生発酵)させた「MARK Hø」は、サワーかつフルーティな風味で一切の苦みがなく、他では出会えない味わい。通常のIPA・ポーター・ピルスナーラインも充実している。
[主な商品]
・MARK Hø(Wild Fermentation)(約5.5%)… 干し草由来の野生酵母で自然発酵させたノーホップビール。酸味とフルーティな風味が広がり、後味はすっきり。ビールとワインとサイダーの中間のような不思議な体験。
・Herslev IPA(6.0%)… オーガニック原料を使ったホップ豊かなIPA。柑橘系の香りと心地よい苦みのバランスが良い、ファーム醸造所らしい素直な旨さ。
・Herslev Porter(5.5%)… ダークモルトのロースト感とチョコレートのニュアンスが楽しめるポーター。オーガニックのまろやかさが際立つ。
Mikkeller(ミッケラー)
- 定番度:★
- 創業:2006年(デンマーク/コペンハーゲン)
- 醸造者:Mikkel Borg Bjergsø(ミッケル・ボア・ビャウソー)
- スタイル:IPA/スタウトほか
元数学・物理教師のミッケル・ボア・ビャウソーが2006年にコペンハーゲンの自宅キッチンから始めた、デンマークのクラフトビール革命を象徴するブランド。最大の特徴は「ジプシーブルワー(Gypsy Brewer)」という運営スタイルで、自社醸造設備を持たずに世界中の醸造所を渡り歩き、コラボレーション醸造でビールを生み出してきた。設立から約20年で2000種類以上のビールをリリースし、世界40カ国以上に輸出。日本でも入手しやすい。
[主な商品]
・Beer Geek Breakfast(7.5%)… コーヒーを使ったオートミールスタウト。深いロースト感とコーヒーの香りが融合した力強い一杯。
・Drink’in the Sun(0.3%)… 低アルコールのウィートビール。小麦の甘みと柑橘系の香りが楽しめる、ミッケラーの「醸造哲学はアルコールに縛られない」を体現した一本。
・Spontanframboise(約6%)… ラズベリーを加えたスポンテニアスファーメンテーション(自然発酵)ビール。爽やかな酸味とベリーの香りが広がる個性派。

To Øl(トゥ・オル)
- 定番度:★
- 創業:2010年(デンマーク)
- 設立者:Tore Gynther(トーレ・ギュンサー)、Tobias Emil Jensen(トビアス・エミル・イェンセン)
- スタイル:クラフト各種(セゾン・スタウトほか)
「To Øl」はデンマーク語で「2杯のビール(Two Beers)」を意味するブランド名。他社の醸造設備を借りるジプシーブルワーとしてスタートしたが、2019年にシェラン島西部のスヴィニンゲに自社醸造所「To Øl City」を開設し、主要な生産をデンマーク国内へ移した。コペンハーゲンのノアブロ地区では、醸造設備を備えた「BRUS(ブルス)」を運営している。
[主な商品]
・Goliat Imperial Stout(10.8%)… チョコレートとコーヒーの濃厚なローストアロマが広がる、インペリアルスタウト。高アルコールながら驚くほどバランスが良く、世界のビール評価サイトでも高得点を獲得している。
・Garden of Eden Saison(6.5%)… フルーティで複雑なファーム系エール。ベルジャン酵母由来のスパイシーさとハーブの爽やかさが重なる、クラフトビール好きへの一本。
・Sur Citra(4.0%)… シトラホップを使ったサワービール。強い酸味と柑橘系の香りが特徴で、炭酸感も心地よい。ビール初心者でもフルーツドリンクのように楽しめる。
Bøgedal Bryghus(ボゲダル・ブリュース)
- 定番度:★
- 創業:2003年頃(デンマーク/ヴァイレ近郊イェリング)
- 醸造所:Bøgedal Bryghus
- スタイル:手作業醸造のエール
ユラン半島の緑豊かな田園地帯・イェリング近郊に位置する、デンマーク最小規模の醸造所のひとつ。最大の特徴は機械を一切使わない完全手作業の醸造で、スカンジナビア唯一の「フリーフォール醸造所(Free Fall Brewery)」として国際的なビール愛好家から熱い注目を集めている。「フリーフォール」とは、ポンプなどの動力を使わず重力だけで液体を移動させる古来の醸造技法のこと。化学薬品も濾過も一切行わない無添加・無濾過の手作りビールは毎バッチごとに味わいが微妙に異なり、工業製品とは対極に位置する生きたビールだ。生産量が極めて少なく、入手には専門店や現地訪問が必要。
[主な商品]
・Nr. 1(約5〜6%)… ブロンドエール。蜂蜜のような穏やかな甘みと花のような香り。機械を使わないフリーフォール醸造ならではの柔らかい炭酸と、手作りの複雑さが滲む一本。
・Nr. 7(約6〜7%)… アンバーエール。深みのある琥珀色で、カラメルモルトのリッチな甘みと落ち着いたホップ感が調和。季節ごとに素材やコンディションが変わるため、毎回が「一点物」の体験になる。
デンマークを代表するビール会社は?
デンマークを代表するビール会社は、Carlsberg GroupとRoyal Unibrewだ。Carlsberg GroupはCarlsbergやTuborgなどを展開し、本社をコペンハーゲンに置く世界的なビール会社。Royal Unibrewはファクセに本社を置き、Royal、Albani、Nørrebro Bryghusなどのブランドを展開している。Tuborgは独立した会社ではなくCarlsberg Groupのブランド、Nørrebro Bryghusは現在Royal Unibrewのブランドだ。
お土産におすすめの銘柄
- Carlsberg Elephant — 7.2%のストロングラガーはビール好きへの印象的な一本。象のラベルのデザイン性も高く、海外みやげとして映える。同じカールスバーグとの飲み比べセットにするのがおすすめ。
- Mikkeller — ユニークなパッケージでクラフトビール好きな人にぴったり。現地ショップでしか手に入らない限定商品もある。
- Faxe 10% — 入手しやすく価格も手頃。高アルコールで話題性もあり、飲んで驚いてもらえる個性派みやげとして最適。
コペンハーゲンで有名なビールは?現地発祥・市内醸造の銘柄を紹介
コペンハーゲンで有名なビールを探すなら、まずはこの街で誕生したCarlsbergとMikkellerが代表格だ。一方、市内で醸造したビールを飲みたい場合は、BRUSやWarpigsなどのブルーパブが候補になる。
- Carlsberg(カールスバーグ):1847年にコペンハーゲンで創業。本社と研究拠点は現在も市内にあるが、市販ビールの主要な生産は2008年にフレデリシアへ移転している。
- Mikkeller(ミッケラー):2006年にコペンハーゲンで誕生したクラフトビールブランド。市内にはMikkeller Barなど複数の店舗がある。
- Nørrebro Bryghus(ノアブロ・ブリュース):コペンハーゲンのノアブロ地区で誕生したクラフトビールブランド。現在はRoyal Unibrewのブランドとして展開されている。
- BRUS/Warpigs:コペンハーゲン市内に醸造設備があり、その場で造られたクラフトビールを楽しめるブルーパブ。
「コペンハーゲン発祥の有名ビール」と「現在も市内で醸造されているビール」では意味が異なる。街の歴史を感じるならCarlsberg、市内で造ったクラフトビールを飲みたいならBRUSやWarpigsが向いている。
デンマークでビール以外に有名なお酒
デンマークでビール以外によく飲まれるお酒には、アクアビットやスナップスがある。アクアビットは、穀物やじゃがいもなどを原料に、ハーブやスパイスで香りを付けた北欧の蒸留酒。デンマークではスモーブローやニシン料理と一緒に、小さなグラスで飲まれている。
ハーブ系のお酒では「Gammel Dansk」も有名。29種類のハーブ、スパイス、花を使った苦味の強いお酒で、ビールとは異なるデンマークらしい味を試したい人に向いている。
ほかには、コペンハーゲンで誕生したウォッカ「DANZKA」や、クリスマス時期に飲まれる温かいワイン「グロッグ」もある。
まとめ
デンマークのビールは、1847年創業のカールスバーグに代表される老舗の伝統的ラガーから、ミッケラーやTo Ølのような世界をリードするクラフトまで、対照的な個性が共存する懐の深い世界だ。Herslev Bryghusの干し草発酵ビールや、Bøgedal Bryghusのフリーフォール醸造のように、世界でここにしかないビール体験もデンマークには息づいている。本記事がデンマーク旅行やビール選びの参考になれば嬉しい。

