はじめに
アイルランドビールと聞くと、「ギネスビール(Guinness)」を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
実際、ギネスはアイルランド生まれの世界的に有名なスタウトビール(黒ビール)で、国内外で愛されるブランドです。
しかし、アイルランドにはギネス以外のスタウトや、個性豊かなエール、クラフトビールも数多く存在します。
この記事では、そんなアイルランドビールに興味がある方に向けて、ギネスを筆頭にアイルランドで飲まれている代表的なビール銘柄を紹介します。
お土産におすすめの銘柄や、日本でも手に入るビール、クラフトビール事情などもまとめていますので、ぜひ参考にしてください。
- アイルランドで定番のビール銘柄(ギネス、キルケニーなど)
- クラフトビールやローカル醸造所の銘柄・種類
- アイルランドのビール文化やスタウトの特徴
- 旅行中やお土産におすすめのビール
アイルランドビールの銘柄一覧
アイルランドビールの銘柄を一覧表にまとめた。
ブランド | 定番度 | 特徴・補足 |
---|---|---|
Guinness | ★★★ | アイルランドを代表するスタウト。クリーミーで苦味のある黒ビール。 |
Kilkenny | ★★☆ | ギネスと同じDiageoグループのアイリッシュクリームエール。 |
Smithwick’s | ★★☆ | アイリッシュレッドエールの代表格。バランスの取れた甘みと苦味。 |
Murphy’s | ★★☆ | コーク州発祥のスタウト。マイルドかつやや甘みのある味わい。 |
Beamish | ★★☆ | 1792年創業の老舗。コークで長く愛されるドライなスタウト。 |
O’Hara’s | ★☆☆ | クラフト系ブランド。伝統的スタイルを重視しつつ、現代的なビールも展開。 |
Galway Hooker | ★☆☆ | 西部発のクラフト草分け。ペールエールを中心に展開。 |
※定番度は、国内外での流通や知名度に基づいた目安です(★=ローカル、★★=国内定番、★★★=国際定番)。
アイルランドビール各銘柄の詳細
Guinness(ギネス)
創業:1759年
スタイル:スタウト(ドライスタウト/アイリッシュスタウト)
生産地:アイルランド東部・ダブリン(セント・ジェームズ・ゲート醸造所)
アイルランドと言えばギネス!というほど、世界的に有名な黒ビール。
1759年から製造され、今では150カ国以上で飲まれている。
スタウト(黒ビール)というスタイルの代名詞でもあり、「アイリッシュスタウト」を世界に定着させた立役者。
ギネスにはローストした大麦が使われており、コーヒーやチョコレートのような香ばしさが特徴。
正しく注げば、誰でも美しい泡の層を作ることができる(注ぎ方には“119.5秒”かけるのが理想とされる)。
炭酸は控えめで、まろやかでクリーミーな飲み口。ゆっくり味わうことで、ビールそのもののコクや奥行きを楽しめる
日本では缶のGuinness Draughtと瓶のGuinness Originalが簡単に入手可能だが、瓶と缶で中身が異なる。主な違いは以下の通り。
項目 | Guinness Draught(缶) | Guinness Original(瓶) |
---|---|---|
ガス | 窒素+炭酸 | 炭酸のみ |
アルコール度数 | 約4.5%(日本版) | 約5.0%(日本版) |
泡 | クリーミーな泡(*) | 普通の泡立ち |
味の特徴 | まろやかで滑らか、軽やか | 苦味・ロースト感が強く、本格派向け |
向いている人 | 黒ビール初心者や飲みやすさ重視の人 | 黒ビール好き、本格派に |
*缶の方には、中にフローティング・ウィジェットという球体が入っており、グラスに注ぐだけで窒素によるきめ細かな泡を再現できる。
クリーミーな泡をじっくり楽しみたい人は缶、スタウト本来の苦味を楽しみたいなら瓶がおすすめ。


Kilkenny(キルケニー)
創業:1710年
スタイル:アイリッシュクリームエール
生産地:アイルランド・ダブリン(旧スミディックス醸造所が起源)
Kilkennyは、もともとスミディックス醸造所でつくられていたレッドエールを起源とするブランドで、クリーミーな泡を備えたギネスのレッドエール版とも言える存在。
ギネスと同じディアジオ社が展開しており、現在はダブリンのセント・ジェームズ・ゲート醸造所で製造されている。
最大の特徴は、なめらかでクリーミーな泡立ちと、柔らかな口当たり。
アイリッシュレッドエール特有のロースト感やトースト香をベースにしながら、苦味は抑えめで、まろやかに仕上がっている。
見た目は赤銅色で美しく、泡と液体のコントラストが映える。ビール初心者でも飲みやすく、食事との相性も良い万能型で、女性にも人気がある。
かつては日本でもパブやバーで飲むことができたが、近年流通が終了。現在は日本国内での購入や飲用が困難になっている。

Smithwick’s(スミディックス)
創業:1710年
スタイル:アイリッシュレッドエール
生産地:アイルランド・ダブリン(旧キルケニー醸造所が起源)
アイルランドのレッドエールを代表する銘柄が、スミディックス。
1710年にキルケニーで創業した老舗ブルワリーで、ギネスよりも古い歴史を持つ。現在は、ギネスと同じくディアジオ社傘下で製造されている。
スタイルはアイリッシュレッドエール。深い赤褐色の色合いと、バランスの取れた甘みと苦味が特徴。ローストモルトによるほのかなキャラメル香やトースト感が感じられ、スムースで飲みやすい。
パブでも長年定番として親しまれており、ギネスと並ぶ「アイルランドのもう一つの顔」と言える存在。
日本国内ではほとんど流通しておらず、入手・飲用は困難。

Murphy’s(マーフィーズ)
創業:1856年
スタイル:スタウト(アイリッシュスタウト/レッドエール)
生産地:アイルランド南部・コーク(Murphy’s Brewery)
Murphy’sは、アイルランド南部・コークで誕生した老舗ブルワリーのスタウト。
ギネスと並び称される存在で、南部では根強い人気を誇る。
味わいはギネスと比べてマイルドで飲みやすいのが特徴。
ローストモルトを使用しつつも、コーヒーやチョコレートを思わせる芳ばしさに加え、スモーキーさをほのかに感じる酸味がアクセントとなっている。
口当たりはスムースで、黒ビール初心者にも向いている。
Murphy’sには「アイリッシュレッド(Murphy’s Irish Red)」も存在する。
ナッツやチョコレートの香り、クリーミーで上品、落ち着いた味わいが特徴のエール。
現在はハイネケン傘下のブランドとなっているが、日本では入手が難しい。

Beamish(ビーミッシュ)
創業:1792年
スタイル:スタウト(アイリッシュスタウト)
生産地:アイルランド・コーク(Beamish & Crawford Brewery)
Beamish(ビーミッシュ)は、アイルランド南部・コークで誕生した老舗ブルワリー「Beamish & Crawford」が手がけるスタウト。
その歴史は1792年までさかのぼり、200年以上の歴史を持つアイルランドの老舗スタウトとして知られている。
味わいは、ローストモルトの香ばしさとほのかな酸味のあるややドライなスタイル。
アルコール度数は4.1%と低めで、軽やかな飲み口ながら奥行きのある風味が特徴。
「ギネスよりも香ばしく、マーフィーズよりもシャープ」という評価も多い。
Beamishは、アイルランド南部・コークで誕生した老舗スタウトブランド。創業は1792年と古く、Murphy’sと並びコークを代表する黒ビールだったが、現在ではどちらもHeineken傘下となっており、製造はMurphy’s Breweryで行われている。

O’Hara’s(オハラズ)
創業:1996年
スタイル:エール、スタウト、IPA、レッドエールなど
生産地:アイルランド中部・カーロウ(Carlow Brewing Company)
O’Hara’s はアイルランド中部のカーロウに拠点を置くクラフトブルワリー。1996年の創業以来、アイリッシュエールやスタウトといった伝統的スタイルを大切にしながら、多様なクラフトビールを展開している。
1996年創業と比較的新しいブルワリーながら、大手による大量生産が主流だった時代に、伝統的なアイリッシュスタイルを復活させたクラフトブルワリーの草分け的存在として注目された。
代表的な商品は「O’Hara’s Irish Stout」。ギネスに比べてロースト感が強く、重厚でほのかにスモーキーな黒ビール。「O’Hara’s Irish Red」も人気が高く、モルトの香ばしさとホップのバランスが良い
近年ではIPAやセッションIPAなど、クラフトシーンを意識した商品展開も積極的。
日本では一部のクラフトビール専門店や酒販サイトで入手可能。ギネス以外でも「伝統的なアイルランドビールの良さを味わいたい。」という人にぴったりの銘柄。

Galway Hooker(ゴールウェイフッカー)
創業:2006年
スタイル:ペールエール(Irish Pale Ale)、ピルスナー など
生産地:アイルランド西部・ゴールウェイ
Galway Hookerは、アイルランド西部の港町・ゴールウェイで誕生したクラフトブルワリー。
2006年の創業以来、「ビールは新鮮で自然なものであるべき」という考えのもと、極力手を加えない製法にこだわったクラフトビールをつくり続けている。
ブランド名は、アイルランド西部の伝統的な木造漁船「Galway Hooker(ゴールウェイ・フッカー)」にちなんでいる。
代表銘柄の「Galway Hooker Irish Pale Ale」は、爽やかな香りとドライな後味が特徴。しっかりしたホップの苦味がありつつ、モルトのほのかな甘みやビスケットのような香ばしさも感じられ、重すぎず、飲みやすいエール。
スタウトのイメージが強いアイルランドにおいて、エール・IPA系のクラフトシーンを牽引する存在で、若い世代を中心に人気が広がっている。

お土産におすすめのビールはどれ?
以下は、どれも日本ではなかなか手に入らない、現地感たっぷりのビールたち。「せっかくなら日本で買えないビールを持ち帰りたい」という人にぴったり。
✅ Murphy’s(マーフィーズ)
- ギネスと並ぶ有名なアイリッシュ・スタウトながら、日本では手に入りづらい。
- ギネスよりマイルドで軽め。スタウト初心者にも飲みやすい。
- ギネス以外でアイルランドらしい黒ビールをお土産にしたい人、黒ビール好きの相手に贈る1本としておすすめ。
✅ Kilkenny(キルケニー)
- クリーミーな泡を備えた、ギネスの雰囲気もあるレッドエール。
- 現在は日本ではほとんど見かけない。
- レトロなパッケージも格好よく、ギネス好きやビール好きへのお土産にぴったり。
✅ Galway Hooker(ゴールウェイフッカー)
- アイルランド西部・ゴールウェイ生まれのクラフトビール。
- ビスケットのような香ばしさと、ほのかな甘味が特徴で、IPAの入口にも◎。
- ヨットのロゴが描かれたパッケージもおしゃれで、自分用やビール仲間へのお土産に最適。
まとめ
私は20年以上前、初めてギネスを飲んだとき、「なんだかコーヒーみたいで変わった味だな」と思っただけで、特に惹かれることはなかった。
ところが歳月が経ち、いろいろなお酒の味を楽しむようになってから改めて飲んだギネスは、まったく印象が違った。
香り豊かで、ゆったりと味わえるその1杯は、今では「大人の嗜み」としてすっかりお気に入りのビールになっている。
アイルランドには、そんなギネス以外にも、マーフィーズのような軽やかなスタウトや、ゴールウェイフッカーのように香りの良いペールエール、クラフト系のO’Hara’sなど、スタウトとエールを中心とした多彩なビール文化が根付いている。
日本では今もラガー系が根強い人気だが、アイルランドのビールは「のど越し」よりも「香りと味わい」をじっくり楽しむスタイルが多い。
アイルランドへ旅行に行く際は、記事で紹介した銘柄を参考に、いろいろなアイルランドビールを味わってみてほしい。