はじめに|この記事で分かること
アイルランドビール(アイリッシュビール)と聞くと、「ギネスビール(Guinness)」を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
実際、ギネスはアイルランド生まれの世界的に有名なスタウトビールで、国内外で愛されるブランドです。
しかし、アイルランドにはギネス以外のスタウトや、個性豊かなエール、IPAといった多彩な種類のクラフトビールも数多く存在します。
この記事では、そんなアイルランドビールに興味がある方に向けて、ギネスを筆頭にアイルランドで飲まれている代表的なビール銘柄を紹介します。
お土産におすすめの銘柄や、日本でも手に入るビール、クラフトビール事情などもまとめていますので、ぜひ参考にしてください。
- アイルランドで定番のビール銘柄(ギネス、キルケニーなど)
- クラフトビールやローカル醸造所の銘柄・種類
- アイルランドのビール文化やスタウトの特徴
- 旅行中やお土産におすすめのビール

アイルランドビールの特徴と種類
アイルランドビール(アイリッシュビール)は、世界的に有名なスタウトを中心に、独自のビール文化を築いてきた。
アイルランドのビールは総称して「アイリッシュビール」とも呼ばれ、スタウトやレッドエールを中心に独自のスタイルが発展している。
スタウトだけでなく、レッドエールやペールエールなど多彩な種類があり、クラフトビールの波も加わってさらに幅広いスタイルが楽しまれている。
スタウト(アイリッシュスタウト)
アイルランドビールを代表するスタイル。
ローストした大麦を使うことで、コーヒーやチョコレートを思わせる香ばしさと深い黒色が特徴。
ギネスやマーフィーズ、ビーミッシュが有名。
アイリッシュレッドエール
赤褐色の美しいビールで、モルトの甘みとホップのほのかな苦味がバランス良く調和。
スミディックスやキルケニーが代表格。
アイリッシュペールエール
比較的新しいスタイルで、フルーティーな香りと爽やかなホップの苦味が特徴。 アイルランドでは伝統的にスタウトやレッドエールが主流だったが、2000年代以降のクラフトビールブームで広まった。 代表例は ゴールウェイフッカーの「Irish Pale Ale」で、アイルランドにおけるペールエール普及の草分け的存在として知られる。
クラフトビール
1990年代以降、O’Hara’s や Galway Hooker をはじめとしたクラフトブルワリーが登場。
伝統的なスタイルを尊重しつつ、IPAやセッションエールなど多彩なクラフトビールが広がっている。
このように、アイルランドビールはスタウトだけでなく、レッドエール、ペールエールなど多様なスタイルが楽しめる。

アイルランドビールの銘柄一覧
アイルランドビールの銘柄を一覧表にまとめた。
ブランド | 定番度 | 特徴・補足 |
---|---|---|
Guinness | ★★★ | アイルランドを代表するスタウト。クリーミーで苦味がある。 |
Kilkenny | ★★☆ | ギネスと同じDiageoグループのアイリッシュクリームエール。(窒素仕様でクリーミーな泡) |
Smithwick’s | ★★☆ | アイリッシュレッドエールの代表格。バランスの取れた甘みと苦味。 |
Murphy’s | ★★☆ | コーク州発祥のスタウト。マイルドかつやや甘みのある味わい。 |
Beamish | ★★☆ | 1792年創業の老舗。コークで長く愛されるドライなスタウト。 |
O’Hara’s | ★☆☆ | クラフト系ブランド。伝統的スタイルを重視しつつ、現代的なビールも展開。 |
Galway Hooker | ★☆☆ | 西部発のクラフト草分け。ペールエールを中心に展開。 |
※定番度は、国内外での流通や知名度に基づいた目安です(★=ローカル、★★=国内定番、★★★=国際定番)。
銘柄の詳細
Guinness(ギネス)
創業:1759年
スタイル:スタウト(ドライスタウト/アイリッシュスタウト/黒ビール)
生産地:アイルランド東部・ダブリン(セント・ジェームズ・ゲート醸造所)
アイルランドと言えばギネス!というほど、世界的に有名なビール。
1759年から製造され、今では150カ国以上で飲まれているアイリッシュスタウトの代表格。
世界的に有名なスタウトであり、日本では「黒ビール」として親しまれている。
スタウトというスタイルの代名詞でもあり、ギネスこそが「アイリッシュスタウト」を世界に定着させた立役者といえる。
ギネスにはローストした大麦が使われており、コーヒーやチョコレートのような香ばしさが特徴。
正しく注げば、誰でも美しい泡の層を作ることができる(注ぎ方には“119.5秒”かけるのが理想とされる)。
炭酸は控えめで、まろやかでクリーミーな飲み口。ゆっくり味わうことで、ビールそのもののコクや奥行きを楽しめる
日本では缶のGuinness Draughtと瓶のGuinness Originalが簡単に入手可能だが、瓶と缶で中身が異なる。主な違いは以下の通り。
項目 | Guinness Draught(缶) | Guinness Original(瓶) |
---|---|---|
ガス | 窒素+炭酸 | 炭酸のみ |
アルコール度数 | 約4.5%(日本版) | 約5.0%(日本版) |
泡 | クリーミーな泡(*) | 普通の泡立ち |
味の特徴 | まろやかで滑らか、軽やか | 苦味・ロースト感が強く、本格派向け |
向いている人 | スタウト初心者や飲みやすさ重視の人 | スタウト好き、本格派に |
*缶の方には、中にフローティング・ウィジェットという球体が入っており、グラスに注ぐだけで窒素によるきめ細かな泡を再現できる。
クリーミーな泡をじっくり楽しみたい人は缶、スタウト本来の苦味を楽しみたいなら瓶がおすすめ。
まさに「アイリッシュスタウト」の象徴といえる1本。


Kilkenny(キルケニー)
創業:1710年
スタイル:アイリッシュクリームエール(アイリッシュレッドエール派生)
生産地:アイルランド・ダブリン(旧スミディックス醸造所が起源)
Kilkennyは、もともとスミディックス醸造所でつくられていたレッドエールを起源とするブランドで、クリーミーな泡を備えた「レッドエール版ギネス」とも言える存在。
ギネスと同じディアジオ社が展開しており、現在はダブリンのセント・ジェームズ・ゲート醸造所で製造されている。
最大の特徴は、なめらかでクリーミーな泡立ちと柔らかな口当たり。
アイリッシュレッドエール特有のロースト感やトースト香をベースにしながら、苦味は抑えめで、まろやかに仕上がっている。
見た目は赤銅色で美しく、泡と液体のコントラストが映える。飲みやすさから幅広い層に人気で、食事との相性も良い万能型ビール。
かつては日本でもパブやバーで提供されていたが、近年は流通が終了し、日本国内での入手はほぼ不可能となっている。現地アイルランドを訪れた際にはぜひ試しておきたい一杯。

Smithwick’s(スミディックス)
創業:1710年
スタイル:アイリッシュレッドエール
生産地:アイルランド・ダブリン(旧キルケニー醸造所が起源)
アイルランドのレッドエールを代表する銘柄が、スミディックス。
「アイリッシュレッドエール」と呼ばれる伝統的なスタイルの定番で、深い赤褐色の色合いと、甘みと苦味のバランスが特徴。
ローストモルトによるほのかなキャラメル香やトースト感も感じられ、スムースで飲みやすい。
1710年にキルケニーで創業した老舗ブルワリーで、ギネスよりも古い歴史を持つ。現在は、ギネスと同じくディアジオ社傘下で製造されている。
パブでも長年定番として親しまれており、ギネスと並ぶ「アイルランドのもう一つの顔」と言える存在。
ただし、日本国内ではほとんど流通しておらず、入手・飲用は困難。

Murphy’s(マーフィーズ)
創業:1856年
スタイル:スタウト(アイリッシュスタウト)、レッドエール
生産地:アイルランド南部・コーク(Murphy’s Brewery)
Murphy’sは、アイルランド南部・コークで誕生した老舗ブルワリーのスタウト。
ギネスと並び称される存在で、特に南部では根強い人気を誇る。
味わいはギネスよりもマイルドで飲みやすいのが特徴。
ローストモルトを使用しつつも、コーヒーやチョコレートを思わせる芳ばしさに加え、ほのかな酸味とスモーキーなニュアンスがアクセントとなっている。
口当たりはスムースで、スタウト初心者にも向いている。
また、「Murphy’s Irish Red」というレッドエールも展開。ナッツやチョコレートの香りを持ち、クリーミーで落ち着いた味わいが楽しめる。
現在はハイネケン傘下のブランドとなっているが、日本では入手が難しい。

Beamish(ビーミッシュ)
創業:1792年
スタイル:スタウト(アイリッシュスタウト)
生産地:アイルランド・コーク(Beamish & Crawford Brewery)
Beamish(ビーミッシュ)は、1792年創業の老舗ブルワリー「Beamish & Crawford」が手がけるスタウト。
200年以上の歴史を誇るアイルランド南部の代表的な黒ビールとして知られている。
味わいはローストモルトの香ばしさと、ほのかな酸味を伴うややドライな仕上がり。アルコール度数は4.1%と低めで、軽やかな飲み口ながら奥行きのある風味が楽しめる。
「ギネスよりも香ばしく、マーフィーズよりもシャープ」と評価されることも多い。
現在はマーフィーズ同様ハイネケン傘下となり、製造はMurphy’s Breweryに統合されている。

O’Hara’s(オハラズ)
創業:1996年
スタイル:スタウト、アイリッシュレッドエール、IPA など
生産地:アイルランド中部・カーロウ(Carlow Brewing Company)
O’Hara’s はアイルランド中部のカーロウに拠点を置くクラフトブルワリー。1996年の創業以来、アイリッシュエールやスタウトといった伝統的なスタイルを大切にしながら、多様なクラフトビールを展開している。
大手による大量生産が主流だった時代に、伝統的なアイルランドスタイルを復活させたアイリッシュクラフトビールの草分け的存在として知られる。
代表的な商品は「O’Hara’s Irish Stout」。ギネスに比べてロースト感が強く、重厚でほのかにスモーキーなビール。「O’Hara’s Irish Red」も人気が高く、モルトの香ばしさとホップのバランスが魅力
近年ではIPAやセッションIPAなど、クラフトビールシーンを意識した新しい商品も積極的に展開している。
日本では一部のクラフトビール専門店や酒販サイトで入手可能。ギネス以外にも伝統的なアイリッシュビールの味わいを試したい人におすすめの銘柄。

Galway Hooker(ゴールウェイフッカー)
創業:2006年
スタイル:アイリッシュペールエール(Irish Pale Ale)、ピルスナー など
生産地:アイルランド西部・ゴールウェイ
Galway Hookerは、アイルランド西部の港町・ゴールウェイで誕生したクラフトブルワリー。
2006年の創業以来、「ビールは新鮮で自然なものであるべき」という考えのもと、極力手を加えない製法にこだわったクラフトビールをつくり続けている。
ブランド名は、アイルランド西部の伝統的な木造漁船「Galway Hooker(ゴールウェイ・フッカー)」にちなんでいる。
代表銘柄の「Galway Hooker Irish Pale Ale」は、アイリッシュペールエールの代表的な1本。爽やかな香りとドライな後味が特徴で、しっかりしたホップの苦味がありつつ、モルトのほのかな甘みやビスケットのような香ばしさも感じられる。重すぎず飲みやすいエールで、IPAの入門としてもおすすめ。
スタウトのイメージが強いアイルランドにおいて、アイリッシュペールエールを代表するクラフトビールのひとつとして、若い世代を中心に人気を広げている。

お土産におすすめの銘柄
以下は、どれも日本ではなかなか手に入らない、現地感たっぷりのビールたち。「せっかくなら日本で買えないビールを持ち帰りたい」という人にぴったり。
✅ Murphy’s(マーフィーズ)
- ギネスと並ぶ有名なアイリッシュ・スタウトながら、日本では手に入りづらい。
- ギネスよりマイルドで軽め。スタウト初心者にも飲みやすい。
- ギネス以外でアイルランドらしいスタウトをお土産にしたい人、スタウト好きの相手に贈る1本としておすすめ。
✅ Kilkenny(キルケニー)
- クリーミーな泡を備えた、ギネスの雰囲気もあるレッドエール。
- 現在は日本ではほとんど見かけない。
- レトロなパッケージも格好よく、ギネス好きやビール好きへのお土産にぴったり。
✅ Galway Hooker(ゴールウェイフッカー)
- アイルランド西部・ゴールウェイ生まれのクラフトビール。
- ビスケットのような香ばしさと、ほのかな甘味が特徴で、IPAの入口にも◎。
- ヨットのロゴが描かれたパッケージもおしゃれで、自分用やビール仲間へのお土産に最適。
まとめ
アイルランドのビールは総称して「アイリッシュビール」と呼ばれ、スタウトやレッドエールを中心に独自のビール文化を築いてきた。
私は20年以上前、初めてギネスを飲んだとき、「なんだかコーヒーみたいで変わった味だな」と思っただけで、特に惹かれることはなかった。
ところが歳月が経ち、いろいろなお酒の味を楽しむようになってから改めて飲んだギネスは、まったく印象が違った。
香り豊かで、ゆったりと味わえるその1杯は、今では「大人の嗜み」としてすっかりお気に入りのビールになっている。
アイルランドには、そんなギネス以外にも、マーフィーズのような軽やかなスタウトや、ゴールウェイフッカーのように香りの良いペールエール、クラフト系のO’Hara’sなど、スタウトとエールを中心とした多彩なビール文化が根付いている。
またアイルランド南部では、ギネスと並んでMurphy’sやBeamishといった地元スタウトが長年親しまれてきたのも特徴的だ。
日本では今もラガー系が根強い人気だが、アイルランドのビールは「のど越し」よりも「香りと味わい」をじっくり楽しむスタイルが多い。
アイルランドへ旅行に行く際は、記事で紹介した銘柄を参考に、いろいろなアイルランドビールを味わってみてほしい。